2019年 ゴルフマラソン 詳細レポート
長い長い1日は、こうして始まり、こうして終わった。
全員集合はまだ真っ暗な午前2時45分。ホテルから大型バスで、湯原昌光プロ設計のいずみかわコース(レギュラーティ;5943ヤード)へ。 バスのヘッドライトを頼りに練習グリーンでパットをしたり、ストレッチをしたりしながら、 カッコウの鳴き声が聞こえ始め、フェアウエイが目視できるようになるのを待つ。 そして各組、ショットガン形式のスタートをするために、案内されてスタートホールに向かう。

スタートは、朝霧の出やすい17番ホールで3時47分に熊よけの花火、(流石に熊は出なかったが、鹿や野うさぎを見かけた参加者がいた)を打ち上げ、その音を聞いて一斉にスタート。
このショットガン形式というのが、初めて参加するプレイヤーには、ちょっと戸惑いを生む。一つはペース配分。 日没までに72ホールをホールアウトさせるためには、最初のコースをできるだけ早く回る必要があるのだが、変に焦ってしまう人もいて、 自分の本来のペースでプレイできないなんてこともある。 それと、特にリゾートコースでは、1番ホールはフェアウエイも広く、 プレイしやすく作られているものだが、ショットガン形式だと、 比較的難しいホールに当たることもある。それで勘を取り戻すまでに時間がかかるなんてこともあるようだ。

いずみかわで18ホールをプレイすると、今度はクラブハウスに上がってきた順に、2組、3組毎にここから20分ほど離れた カーチス・ストレンジ設計の36ホール、リバーコース、ウッドコースへ(それぞれ5686ヤード、6402ヤード)。 この2コースのクラブハウスに着くと、おにぎりや豚汁が用意されており、15分から20分前後の休憩。それでも早い組は 7時前に36ホール目に挑戦してゆく。ここでは、主催者の能力が問われることになる。

というのも、プレーをする4コースのうち、最も難しいのがウッドコースで、最も簡単なのがリバーコース。 参加者としては、体力があるうちにウッドを回りたいと思う参加者もいれば、体が温まった2コース目で波に乗りたいと 思うものもいる。一方、プレヤーたちが詰まらないように、2人のチーム、3人のチーム、いずみかわで遅かったプレーヤーなどを考慮しながら、 両コースのアウトインに振り分けてゆく。この2コースをプレイ中にランチボックスが渡され、 プレイをしながら(?)食事を取るし、各コースのスタート前には、スナック菓子やバナナも手渡される。

この2コース、いずみかわを含めて54ホールを終えると、今度はホテルのあるタワーコース (ジャンボ尾崎設計;6228ヤード)へ再びバスで移動。 早い組だと、午後1時ちょっと過ぎには、タワーコースをスタートできる。 もうこうなると、急いでプレーする必要もないのだが、早くホールアウトした組のプレイヤーの中には、 「おかわりゴルフ」を考える参加チームもある。

実際、競技には関係しないが、72ホール終了後、9ホールの「おかわり」をして81ホール目を終えても、まだ足りず、 さらに9ホール、1日90ホールに挑む参加チームもあったほど(もっとも、最後の9ホールは日没のために完全には 消化できなかったようだ)。 結局、最初のチームがホールアウトしたのが、午後3時58分。最後の組がホールアウトしたのが日没近い7時10分。 全員、72ホールを完走・完歩(?)したのだった。

ゴルフマラソンは究極の贅沢?
梅雨の本州を離れて、寒さを感じるほど爽やかな北の大地でのゴルフ。夏至に近いこの時期で、さらに日照時間の 最も長い北海道だからこそできる72ホールプレー。しかし考えてみればこのゴルフマラソンは本当に贅沢だ。

四つの18ホールコースでゴルフマラソンをするには、40名前後が限界だという。それは未明からのコース間の移動や 準備のために、コースの協力が欠かせないし、何より最初の18ホールで遅延なくプレイするために、ショットガン方式で プレイするためだ。ほぼ借り切り状態で、プレーするのだから、これほどの贅沢ゴルフもない。 スタッフも40名を超えるのではないだろうか? それも、蝦夷富士とも言われる羊蹄山を望み、尻別山の麓の雄大な 絶景を独占するというおまけ付き。18ホールなり36ホールのコースを何度もラウンドするのなら、簡単(?)だが、 72ホールが全て異なっているからこそ、ゴルフの楽しみも増すし、他では味わえない贅沢な醍醐味があるというわけだ。
これは試練か、あるいは快楽か?
はたから見ると、何か苦行のように思えるし、体力や集中力が続くものかとも心配になる。 しかし、参加者最高齢の82歳、これまで今回を含めて過去19回のゴルフマラソン、全てに参加した見澤弘氏は、 「楽しいから毎回参加しているんだ。楽しくなければ来ないよ」と語る。そして、「1日に4コースをラウンドするなんて 他にはない。自分がどうなるのか体験してみたい」と初参加した坂井昭彦プロ(アマチュア競技のため、 この2人には名前を出す了解を得て、試合前と試合後にインタビューした)。

その坂井プロのチームの初参加者は、「あと7ホールで終わってしまうのか、あと6ホールしかないのか」と最終コースのバック9を 惜しむようにプレイしていた。 あるいは「あと数ホールと言い聞かせて頑張った」と語るある参加者もゴルフそのものは楽しかったと語る。

もともとゴルフが好きで集まった参加者たちだが、脱落者もなく、全員72ホールを完璧にプレイした。 たしかにゴルフカートのフェアウエイ乗り入れが認められているとはいえ、アップダウンのある4コースで、72ホール後に さらに 「おかわり」プレイを続ける者や前日にゴルフをしてきた参加者、翌日、翌々日のプレイ予約をしているプレイヤー など、体力的には余裕のあるプレイヤーが少なからずいた。

スコアについても、ホールを重ねる毎にボロボロになるのかと思っていたら、逆に最後の9ホール、63ホール目からが 1番良かった」 なんて語るプレイヤーもいたのだ。実際、レギュラーティから5943ヤードと比較的簡単な最初の 18ホールと比較的に難しい6288ヤードの 最後の18ホールのスコアが、同じか良かった参加者が5名もいたのだ。 最後の18ホールのスコアが、最初の5打差以内に収まっているプレイヤーなら13名もいた。 逆に最後のコースで最初のコースより11打以上叩いているのは、10名しかいない。たしかに最後の18ホールの方が スコア的には悪いが、72ホール目でも、集中力や体力はさほど落ちないもののようだ。
ゴルフをするから健康なのか?
健康だからゴルフができるのか?
前述の見澤氏は、今だに年間80ラウンドはプレイし、昨年は81でエージシュートを達成。 50kmを3日間、計150kmを歩く「東松山スリーディマーチ」やホノルルマラソンなどにも参加するアイアンマンだ。 このゴルフマラソンには、第1回大会から出場し、過去72ホールに加えて日没までに110ホール回ったこともある。 2016年には、「16回大会なので、ゴルフマラソンの4ラウンドを入れて6日間で16ラウンドしたよ」という。 今回のラウンド後も余裕で「さほど疲れていないよ。 明日もゴルフをするけれど、明日は18ホールだけだからね。 今日はなんとか400を切ることができた。ゴルフマラソンは、 あまり考えずに前に進むことが大切」とコツ(?)を語る。 健康の秘訣を聞くと、「良く寝ること。食も大切。朝食は毎日自分で作った野菜、それに豆とウコンをペースト状にして 食べている。そしてなにより毎日(距離を)歩くこと。継続が大切だよ」と語っている。

運動を継続することの重要性については、坂井プも同意する。 坂井プロは、ゴルフコンディショニングスタジオで、このゴルフマラソンの前週に女子レジェンズツアーで優勝した斎藤裕子などのプロの コーチをする一方、 「体の可動性を高めて、90歳まで現役でゴルフ 出来る健康な身体作りをする」ためのコンディショニングコーチを アマチュアゴルファーに行なっている。そんな坂井プロだけに、 35歳から82歳の見澤氏まで平均55歳の参加者が 1日で72ホールを プレイするゴルフマラソンに興味を持ち、自腹で友人とともに参加してきたのだ。 「こんな体験は初めて、他ではできないものだ。自分のゴルフは 3コース目で、手と足がつった状態になったが、 その後になんとか持ち直した」とか。 スコアは75―75―83―75の308。 グロスでは、4コース全てで70台で回り、301の常連参加者 カタオカタカシさんに敗れて2位だったが、 収穫は十分にあったようだ。

そういえば、ゴルフの総本山R&Aが大学と協力して研究した結果、ゴルフは健康に役立ち、心臓病や血管系の病気、 あるいはうつ病、認知症の予防にもなり、果ては寿命も伸ばすことが分かったとか。 ゴルフ仲間とのコミュニケーションやコースの戦略などのため、坂井プロも、ゴルフが認知症予防に役立つと語っていた。 考えてみれば、ビック3と言われたアーノルド・パーマーが3年前になくなったのは、87歳だったし、 ゲーリー・プレイヤーとジャック・ニクラスはそれぞれ、83歳と79歳で現役。元祖ビック3のS・スニード、B・ネルソン、 B・ホーガンの三人は、それぞれ順に89歳、94歳、84歳で他界している。

アメリカの現在の男性平均寿命が76歳ということを考えれば、ゴルファーの寿命が長いことがわかる。 平均年齢55歳のゴルフマラソンの参加者。その全員が72ホールを完走・完歩したことを見ていると、ゴルフが健康に寄与していることは間違いがなさそう。 あるいは、ゴルフマラソンが、参加者たちの寿命を延ばすことになるのかも?